前回、寒冷地の道路や歩道について、技術と関係者の「地図」を描いてみました。
(リンク)

何が課題なのか。
どんな技術が関係しそうなのか。
誰が関わるのか。

整理してみると、知らないことの多さに改めて気づいた一方で、少しだけ全体像も見えてきました。

ところが、地図を描いたことで、新しい疑問も出てきました。

この地図の中で、自分はどこにいるのか。
どこを目的地にするのか。
そして、そこまでどう進めばよいのか。

地図があるだけでは、旅は始まりません。

次はガイドを探せばよいと思っていました

最初は単純に考えていました。

地図を描いたのだから、次は専門家に相談すればよい。

旅行に例えるなら、現地をよく知るガイドを探すようなものだと思っていました。

寒冷地の道路なら道路の専門家。
凍上なら地盤の専門家。
材料なら材料の専門家。

それぞれの分野には、その道をよく知る人がいます。

専門家に相談すること自体は、もちろん必要だと思っています。

実際、前回まで考えてきたのも、「何か形にしてからでないと相談できない」のではなく、まだモノがなくても、まず話してみることでした。(リンク)

ただ、地図を描いたことで、もう一つ考える必要が出てきました。

私は、まだどの道を通るべきなのかすら十分に分かっていません。

では、最初に会った一人の専門家に、旅程全体まで委ねてよいのでしょうか。

その前に、旅行代理店のような役割が必要なのではないか

旅行を考えてみました。

行き先も、日程も、予算も、何をしたいかも、まだ曖昧。

そんな状態で、いきなり登山ガイドに相談すれば、山を中心にした話になるでしょう。

鉄道に詳しい人に相談すれば、鉄道を使ったルートが中心になるかもしれません。

どちらも間違ってはいません。

むしろ、その分野の専門家としては自然なことだと思います。

問題は、こちらがまだ「どんな旅にしたいのか」「どのルートを選ぶのか」を十分に整理できていないことです。

本来なら、その前に旅行代理店のようなところで、

何をしたいのか。
どこまで行きたいのか。
どんなルートがありそうなのか。
途中でどんな専門家が必要になるのか。

そんなことを一緒に整理してから、それぞれのガイドに相談する方がよさそうです。

研究開発も、少し似ているのではないかと思いました。

研究開発にも、旅行代理店に近い機能はあります

ここは少し調べてみると、私の最初の考えは単純すぎました。

研究開発の世界にも、産学連携コーディネーターや、大学などで研究活動を支えるURA(リサーチ・アドミニストレーター)、研究開発支援機関など、研究者や企業をつないだり、研究開発を支援したりする役割があります。

つまり、「研究開発には旅行代理店がいない」と言い切るのは正確ではありません。

旅行代理店に近い機能は、すでにあります。

ただし、相談すれば、

「あなたの目的地はここです」
「このルートで行きましょう」
「途中ではこの専門家に会いましょう」

と、自分のテーマについて最初から最後まで旅程を決めてもらえるわけではありません。

少なくとも今の私には、このテーマ全体を見ながら、目的地からルートまで一緒に決めてくれる一人の相手は見つかっていません。

そもそも、それを誰か一人に求めること自体が違うのかもしれません。

支援してくれる人たちの力を借りながらも、旅程を考える機能は、自分でも少しずつ持つ必要がありそうです。

一人の専門家に、全部を求めない

そう考えると、専門家との向き合い方も変わってきます。

「この研究をどう進めればよいでしょうか」
「次は誰に会えばよいでしょうか」
「全体のロードマップを作ってください」

と、いきなり全部お願いするのは少し違うと思います。

相手は、その分野の専門家です。

こちらの研究開発旅行を丸ごと設計するために待っているわけではありません。

だから、まずはその人の専門性が最も生きる問いを持っていく必要があります。

これは単なる礼儀の話ではありません。

相手の専門から問題を見直してもらうことこそ、こちらにとって一番価値があるからです。

自分の考えを説明することも必要です。

ただし、自分が作った地図の正しさを確認してもらうためではありません。

自分では気づけなかった見方を加えてもらうためです。

今回の面談は、お墨付きをもらいに行く場ではない

ここでいう面談は、これまで専門家の話を聞いた経験全般ではなく、今回のテーマについて具体的に相談する最初の面談です。

その面談にも、シナリオが必要だと考え始めました。

たとえば、いきなり、

「高分子材料を使ったら、凍上を抑えられますか」

とは聞かない方がよいと思っています。

それでは、最初からこちらの仮説に相手を乗せてしまいます。

それよりも、

「寒冷地の歩道で、凍上や段差、ひび割れが起きています。私は材料技術から何かできないかと考えていますが、そもそも寒冷地土木の立場から見ると、この問題はどう捉えるべきなのでしょうか」

と聞く。

まず、問題そのものを専門家の目で見てもらいます。

そのうえで、

「私はこう整理してみましたが、どこがおかしいでしょうか」

と、自分で描いた地図を見てもらう。

ここでは、自分の考えにお墨付きをもらうのではありません。

むしろ、壊してもらう。

そのくらいのつもりで臨んだ方がよいと思っています。

最初に聞きたいことが見えてきました

現時点では、今回の面談で聞きたいことは、大きく三つあります。

一つ目は、

「私の問題設定そのものに、勘違いはありませんか」

二つ目は、

「この問題を先生の専門から見ると、どこが一番重要ですか」

三つ目は、

「このテーマを考えるうえで、次にどの分野の視点が必要でしょうか」

です。

この順番なら、相手の専門性を中心に置きながら、自分が描いた地図も更新できます。

そして、その結果として、

「次はこの分野の人にも聞いた方がよい」

という話が出てくれば理想です。

最初から人を紹介してもらうことを目的にするのではありません。

専門家の話を聞き、問題の見方が変わった結果として、次に必要な視点が見えてくる。

そんな進め方にしたいと思っています。

具体的な研究課題を決め切るのは、まだ早いのかもしれません

これまで、寒冷地の道路や歩道に材料技術を使えないか、かなり調べてきました。

高分子材料技術を使えないか。
凍上を抑えられないか。
防滑に使えないか。
路盤や中間層に使えないか。

こうした検討が無駄だったとは思っていません。

むしろ、調べたからこそ、材料だけを見ていてはいけないことも分かってきました。

そして、ここでもう一度、自分が何をしたいのかを確認しておきたいと思います。

目指しているのは、高分子材料を道路に使うことではありません。

歩道を直すこと自体でもありません。(リンク)

雪国でも、路面が原因で転んだり、滑ったり、つまずいたりせず、安全に移動できるようにすることです。

そのための手段として、寒冷地の歩道を滑りにくく、壊れにくく、維持管理しやすくできないかと考えています。

そのために高分子材料が有効なら使えばよい。

別の材料の方がよければ、それを使えばよい。

材料だけでは解けないなら、構造や排水、施工、維持管理まで考えなければなりません。

大きな目的は、以前よりむしろはっきりしてきました。

一方で、その目的に向けて、具体的にどんな技術テーマや研究課題を設定するのかは、まだ決め切らない方がよいのかもしれません。

まず、問題の見方を確かめ、解像度を上げる。

そのために専門家に会う。

専門家の話を聞いて、地図を書き直す。

必要なら、違う専門家にも会う。

その繰り返しの中で、具体的な研究課題が少しずつ絞れてくるのではないでしょうか。

旅程は、自分でも考えなければならない

地図を描き、次はガイドだと思っていました。

でも、その前に、旅程全体を組み立てる役割が必要だと気づきました。

研究開発には、その役割を支援してくれる人や組織があります。

その力は、これから積極的に借りればよいと思います。

一方で、自分がどこを目指しているのか、今どこにいるのか、次に何を確かめるのかまで、すべて誰かに決めてもらうわけにはいきません。

複数の専門家の話を聞きながら、自分でも地図を書き直し、旅程を組み替えていく。

そうすることで、少しは迷走を減らせるのではないかと思っています。

そのためにも、まず考えたいのが、今回予定している専門家との面談です。

何を説明するのか。
何を聞くのか。
何を持ち帰るのか。

地図を作った次は、専門家に完成した答えを求めるのではなく、専門家との対話によって地図を更新する。

そこから、次の一歩を踏み出してみようと思います。