歩道対策にゴム技術は使えるのか。路面と路盤の可能性を考える
前回、歩道を何とかしたいという思いから、雪国の歩道対策や寒冷地の舗装技術について調べ始めたことを書きました。
歩道のひび割れ。
凸凹。
冬の雪や氷。
除雪された雪の置き場所になってしまう歩道。
春先に残る路面の傷み。
こうしたものを見ていると、単に「歩きにくい」というだけでは済まない問題だと感じるようになりました。
そして前回の最後に、次は技術の可能性をもう少し掘り下げて考えてみたいと書きました。
今回は、その続きです。
歩道対策に、技術として何ができるのか。
その中で、ゴム技術はどこに使える可能性があるのか。
ここを考えてみたいと思います。
まず大事なのは、いきなり「ゴムを使えばよい」と考えないことです。
ゴムは魅力のある材料です。
弾性があります。
衝撃を吸収できます。
ひび割れに強くできる可能性があります。
使用済みタイヤなどを活用できれば、資源循環にもつながります。
しかし、材料として良さそうだからといって、そのまま道路や歩道で使えるわけではありません。
道路には道路の条件があります。
歩道には歩道の条件があります。
寒冷地には寒冷地の厳しさがあります。
そこでまず、過去に道路でゴムがどのように使われてきたのかを見てみました。
大きく見ると、ゴムの使い方には二つの方向があるように見えます。
一つは、路面側で使う方向です。
道路の表面に近いところにゴムを使う。
ゴム粒子や弾性体を混ぜる。
ゴム改質アスファルトとして使う。
あるいは、ゴムチップを使った弾性舗装として使う。
もう一つは、路盤側で使う方向です。
道路の下の層に、破砕したタイヤ由来の材料などを使う。
断熱性や排水性、軽量性を活かす。
凍上を抑えたり、水の影響を減らしたりする。
つまり、ゴムを「表面に近いところで使う」のか。
それとも「下の構造に近いところで使う」のか。
この二つの方向があったように理解しました。
そして、調べていく中で感じたのは、今も比較的残っているのは、主に路面側の活用ではないかということです。
たとえば、凍結抑制舗装には、ゴム粒子やウレタンなどの弾性体を使う考え方があります。
車が通ると、その荷重で弾性体が変形します。
その変形によって、路面に付いた氷の膜を割ったり、剥がれやすくしたりする。
この考え方は、車道では一定の実用段階にあるようです。
なるほど、と思いました。
効果が分かりやすいのです。
氷が割れやすくなる。
剥がれやすくなる。
除雪しやすくなる。
路面の機能として説明しやすい。
しかも、路面側であれば、既設の道路に対しても比較的考えやすい。
もちろん、施工条件や耐久性、費用の問題はあります。
それでも、何を狙っている技術なのかは説明しやすい。
一方で、路盤側のゴム活用は、少し事情が違うように感じました。
破砕タイヤを骨材状にした材料は、海外では断熱層や排水層、軽量盛土などに使われているようです。
断熱性がある。
水を通しやすい。
軽い。
寒冷地の道路や歩道を考えるうえでは、非常に魅力的に見えます。
凍結が路床に届くのを遅らせることができるかもしれない。
融雪水を滞留させにくくできるかもしれない。
軟弱な場所や埋設物の上で、荷重を抑えられるかもしれない。
これは面白いと思いました。
しかし、同時に難しさも見えてきました。
路盤側は、効果が見えにくいのです。
歩く人からは見えません。
道路管理者から見ても、すぐに効果が分かるわけではありません。
長い期間をかけて、凍上が減ったのか。
段差が出にくくなったのか。
補修回数が減ったのか。
そうしたことを見ていく必要があります。
さらに、路盤側にゴム材料を使う場合には、構造として成立するかを確認しなければなりません。
たわみは大きくならないか。
長期的に圧縮して沈まないか。
端部で局所的な変形が起きないか。
埋設物の補修で掘り返したときに扱えるか。
粒度や品質をどう管理するのか。
環境面の確認はどうするのか。
こうした論点が出てきます。
つまり、路盤側のゴム活用は可能性がある一方で、材料を入れればすぐ使えるという話ではありません。
設計技術として仕上げる必要があります。
ここで、自分の中で一つ見えてきたことがあります。
ゴム技術は、道路に使えないわけではない。
ただし、使う場所を間違えると残らない。
路面側で生き残った技術は、効果が見えやすかったのだと思います。
氷が剥がれやすい。
路面が傷みにくい。
除雪しやすい。
こうした効果は、比較的説明しやすい。
一方で、路盤側の技術は、うまくいけば非常に価値があります。
しかし、効果が見えるまで時間がかかります。
施工や維持管理の仕組みにも入り込む必要があります。
だからこそ、技術としては有望でも、簡単には広がりにくいのだと思いました。
では、歩道対策ではどう考えればよいのか。
ここが次の問いになります。
歩道は、車道とは違います。
車道では、車の荷重があります。
交通量があります。
タイヤの力があります。
車が通ることで効果を発揮する技術もあります。
しかし、歩道では主役が違います。
歩く人。
高齢者。
子ども。
ベビーカー。
車いす。
自転車。
小型除雪機。
雪山。
融雪水。
車道と同じ技術を、そのまま歩道へ持ってくることはできません。
特に、車の荷重で弾性体を変形させて氷を割るような技術は、歩道ではそのまま効かない可能性があります。
人が歩く荷重で十分に変形するのか。
自転車や小型除雪機の荷重ではどうか。
雪や氷が付いた状態で、すべりやすくならないか。
除雪機の刃やブラシで傷まないか。
冬だけでなく、春や夏も安全に使えるのか。
歩道には歩道の条件で確かめる必要があります。
一方で、歩道だからこそ、路面に近い技術の価値は大きいとも感じます。
人は、歩道の状態を足元で直接感じます。
滑りそう。
つまずきそう。
ベビーカーが押しにくい。
車いすで通りにくい。
雪で道幅が狭い。
春先に凸凹が残る。
これらは、すべて路面に近いところで感じる問題です。
だから、歩道対策でゴム技術を考えるなら、まずは歩く人が直接感じる場所から考えるのが自然ではないかと思いました。
ただし、路面だけを見ればよいわけでもありません。
歩道の凸凹や段差は、表面だけの問題ではないかもしれません。
水が入り、凍り、融ける。
凍上で持ち上がる。
融雪期に支持力が落ちる。
その結果として、表面に不陸が出る。
そう考えると、路面側の技術と路盤側の技術を分けて考えるだけでは足りません。
表面で雪や氷を剥がれやすくする。
低温でひび割れにくくする。
下の層では、凍結や水の影響を抑える。
排水をよくする。
構造として沈みにくくする。
このように、路面と路盤を組み合わせて考える必要があるのではないか。
そう思うようになりました。
ただ、いきなり全面採用を目指すべきではありません。
これは強く感じています。
歩道を何とかしたい。
ゴム技術で貢献したい。
その気持ちはあります。
しかし、思いだけで進めると、技術は残りません。
大事なのは、比較できる形で小さく試すことです。
既存技術だけでつくる断面。
そこに路面側のゴム技術を加えた断面。
路盤側にゴム由来材料を使った断面。
さらに、路面側と路盤側を組み合わせた断面。
こうしたものを、同じ場所、同じ冬の条件で比べる。
滑りにくさ。
雪や氷の剥がれやすさ。
ひび割れ。
段差。
凍上。
融雪水。
除雪しやすさ。
補修しやすさ。
費用。
環境面。
これらを見ていく。
最高性能の材料を探すのではなく、札幌の歩道で本当に使える断面を探す。
その考え方が必要だと思います。
ここで大事なのは、ゴムを主役にしすぎないことです。
ゴムだけで歩道問題を解決するのではありません。
二層アスファルト。
凍上抑制層。
排水。
断熱。
既存の寒冷地技術。
そうした土台があって、その上にゴムの価値をどう乗せられるか。
この順番で考えるべきではないかと思いました。
ゴム単独で解くのではなく、既存技術を土台にして、ゴムの上乗せ価値を検証する。
これが、今の私の考えです。
歩道を何とかしたいという思いから始まりました。
しかし、調べていくほど、簡単な話ではないことが分かってきました。
路面には路面の可能性があります。
路盤には路盤の可能性があります。
ただし、どちらにも課題があります。
そして、歩道は車道とは違います。
だからこそ、過去の道路でのゴム活用をそのままなぞるのではなく、歩道に合わせて考え直す必要があります。
技術の可能性はある。
けれど、それを本当に使える形にするには、歩道という現場に合わせて確かめなければならない。
次に考えたいのは、実際にどのような実証を行えば、歩道対策として意味のあるデータが取れるのかということです。
小さく試す。
比べる。
冬を越えて見る。
維持管理まで含めて評価する。
そこまでできて初めて、「歩道を何とかしたい」という思いが、具体的な取り組みに変わっていくのだと思います。