以前の記事で、歩道の雪や氷に働きかけるためのエネルギーを、どこから持ってくればよいのだろう、と書きました。

車道なら、車が通るときに加わる大きな力を利用できる場合があります。でも、歩道ではそうはいきません。雪や氷を融かすには熱が必要ですが、その熱をどこから調達するのかという問題もあります。

そんな疑問を持ちながら、既存技術を調べてきました。

その後、技術を「何を変えたいのか」「どうやって変えるのか」「どんな手段を使うのか」に分け、自分なりの地図を描いてみました。

前回は、凍結抑制や防滑について、先人たちの研究を年代順にたどりました。その内容を技術の地図に書き加えながら、改めて仕組みや課題を整理していました。

そして最近、帰りの電車の中で、以前から気になっていたエネルギーのことを、また考えていました。

氷を融かすにも、剥がすにも

氷を水にするには、熱が必要です。

路面に付着した氷を剥がすには、氷と路面の間の付着を断ち切る必要があります。

剥がした氷を別の場所へ移動させるにも、力を加えなければなりません。

当たり前といえば、当たり前の話です。

では、こうした作用を生み出すために、既存技術は何を利用しているのでしょうか。

例えば、弾性のある舗装材料を使って、氷を剥がれやすくする技術があります。

車両が通過するときに路面へ加わる荷重と、それによって生じる変形を利用するものです。

この場合、氷を融かすための熱を外から供給するのではなく、車両の通過によって生じる変形を利用しています。

しかし、歩道では車道のような大きな荷重は期待できません。

以前から考えていた、歩道では何を利用すればよいのかという疑問に戻ってきます。

エネルギーだけでは整理できない技術もある

一方、調べてきた技術には、少し違った仕組みのものもあります。

例えば、凍結防止剤です。

これは、外部から熱を供給するのではなく、水に溶けることで凝固点を下げるなど、凍結する条件を変えるものです。

また、路面の凹凸を利用して滑りにくくする方法もあります。

こちらは、氷を融かしたり剥がしたりするのではなく、靴やタイヤとの接触状態を変えることで、摩擦や引っ掛かりを確保しようとするものです。

もちろん、路面が氷で覆われれば、その効果が十分に得られないこともあります。

そして、電気や地中熱などを利用する融雪では、熱の供給が直接的な課題になります。

こうして並べてみると、雪や氷への対策といっても、働きかけ方はずいぶん違います。

熱を供給するもの。外から加わる力を利用するもの。水が凍る条件を変えるもの。接触状態を変えるもの。

すべてを「エネルギーをどこから持ってくるのか」だけで整理するのは、少し無理がありそうです。

ただ、私が気になっているのは、そこから先です。

その作用は、いつ、どこで働くのだろう

例えば、車両の荷重を利用する技術なら、車が通過したときに作用が生まれます。

その効果は、車が通る頻度やタイミングに左右されないのでしょうか。

歩行者の荷重を利用する場合も同じです。人通りの少ない場所や時間帯では、十分な作用が得られないかもしれません。

凍結防止剤なら、材料が残っていることや、必要な濃度が保たれていることが重要になります。

路面の凹凸を利用するなら、摩耗や雪氷による目詰まりで、接触状態が変わる可能性があります。

熱を利用するなら、必要なときに十分な熱を供給できるかどうかが問題になります。

こうして考えると、技術が機能する仕組みを理解するだけでは足りません。

その作用を生み出すものが、必要な場所で、必要なときに、十分に得られるのか。

ここまで考える必要がありそうです。

効果が続くことも、別の問題です

さらに、必要なときに作用が得られたとしても、その効果がどれくらい続くのかという問題があります。

凍結防止剤は、流出したり薄まったりすれば補充が必要になります。

舗装材料は、摩耗や劣化によって性能が変化する可能性があります。

融雪設備なら、熱源の確保や運転に必要な電力、設備の維持管理が課題になります。

もちろん、こうした課題は既存技術の研究でも検討されているはずです。

ただ、これまでは技術ごとに仕組みや効果を調べることが中心でした。

それを、作用が生まれる条件と、その効果の持続性という共通の視点で眺めてみる。

そうすると、それぞれの技術が得意とする条件や、適用しにくい条件が、もう少し分かりやすくなるのではないでしょうか。

特に歩道では、場所によって人の通行量も違いますし、維持管理にかけられる手間や費用にも制約があります。

技術の性能だけでなく、実際に使う場所の条件まで考えることが大切なのだと思います。

描きかけの地図に、もう少し書き加える

以前、技術を整理するために、三つの問いを考えました。

何を変えたいのか。

どうやって変えるのか。

どんな手段を使うのか。

これは今でも、技術を理解するための基本的な考え方です。

今回、そこにもう少し書き加えてみたくなりました。

その作用は、何を利用して生まれるのか。

必要なときに、その作用を得られるのか。

そして、その効果を持続させるには何が必要なのか。

こうした視点で整理すれば、既存技術の得意な条件と、適用しにくい条件が、もう少し明確になるかもしれません。

さらに、ある技術が苦手とする条件を、別の技術で補うことも考えられそうです。

もっとも、これはまだ私の頭の中での整理です。

すでに同じような考え方で研究している人もいるでしょうし、もっと適切な整理の方法があるのかもしれません。

とはいえ、まずは既存技術から

以前から気になっていた、雪や氷に働きかけるエネルギーをどこから持ってくるのかという疑問。

いろいろな技術を調べてきたことで、その問いを少し違う角度から眺められるようになってきました。

エネルギーの調達先だけでなく、作用が生まれる条件や、その効果が続く条件も考える。

そうすれば、既存技術が得意とする条件や適用しにくい条件、さらに、技術を組み合わせる可能性も見えてくるかもしれません。

とはいえ、私はまだ道路技術の世界に入って間もない新参者です。

こんな発想、きっと誰かが既に考えているはずです。

まずは、その人たちが何を考え、どんな技術を生み出し、どこまで実用化してきたのかを知ることが先でしょう。

新しい技術を思いつく前に、既存技術をもう少し理解する。

その方針は変わっていません。

帰りの電車で、以前からの疑問をあれこれ考えていたら、描きかけの地図に書き込むことが、また少し増えました。

さて、この地図はどこまで広がるのでしょうか。