前回の記事では、大学の先生に相談できる可能性が出てきたことを書きました。
(リンク:前回の記事)

「さて、この先、大学の先生とどんな話になるのでしょうか。」

私自身、かなり楽しみにしています。

ただ、まだ先生とは話していません。

その代わり、このところ少し焦って勉強しています。

何しろ、こちらは道路の専門家ではありません。寒冷地の道路や歩道について、長年研究してきたわけでもありません。

そんな状態で大学の先生のところへ行って、

「こんなことを考えています。」

と話すわけです。

さすがに、何も知らないまま行くのはまずい。

できれば、

「この人、何も分かっていないな。」

と思われるのだけは避けたい(笑)。

もちろん、知ったふりをしたいわけではありません。

せっかく時間を取ってもらうなら、少しでも具体的な話ができるようにしておきたい。

そんな妙な緊張感もあって、これまで以上に文献や技術情報を見るようになりました。

調べるほど、分からなくなる

ところが、調べ始めると出てくる技術の多いこと。

融雪、凍結抑制、防滑、凍上対策、断熱、排水。

さらに、ゴムや弾性材料、舗装構造、熱を使う技術。

一方では、センサー、カメラ、AIによる路面状態の判定などもあります。

道路の世界に詳しい人から見れば、当たり前の技術ばかりなのかもしれません。

でも、こちらは初心者です。

一つ調べると、その先にまた知らない言葉が出てくる。

さらに調べると、また別の技術が出てくる。

最初は、

「雪国の道路や歩道に使えそうな技術を探してみよう。」

くらいに考えていました。

ところが技術が増えてくると、

「結局、何から考えればいいのだろう。」

となってきました。

調べれば調べるほど分からなくなる。

知らない分野を勉強すると、だいたいこうなります(笑)。

「制御する技術」と「把握する技術」

そんな中で、最近、自分なりに少し整理できるようになってきました。

今、自分が調べている技術を整理するために、まず、

状態を制御する技術状態を把握する技術

という二つの視点で見てみることにしました。

これは、寒冷地の道路技術を学術的に二つに分類できる、という意味ではありません。

あくまで、今の私が全体像をつかむための仮の地図です。

例えば、雪や氷を融かす。滑りにくくする。水を逃がす。凍上による変形を小さくする。

こうした技術は、道路や歩道の状態そのものに働きかけるものです。

私は、これを「状態を制御する側」と考えています。

一方で、

どこが凍っているのか。

どこが滑りやすいのか。

どこに段差やひび割れがあるのか。

どこから補修した方がよいのか。

こうした状態を、センサーやカメラ、AIなどを使って計測したり、検知したり、推定したりする技術もあります。

こちらは「状態を把握する側」です。

こうやって二つの視点に分けてみると、少し頭の中がすっきりしました。

制御する技術も、もう少し分けないといけない

ただ、整理してみると、もう一つ気づきました。

「制御する技術」と言っても、その中に違う階層の話が混ざっています。

例えば、

融雪とゴムを同じように並べるのは、少し変です。

「雪を融かす」は作用の話ですが、ゴムはその作用を実現するために使う材料の一つです。

そこで、制御する技術については、さらに三つに分けて考えてみることにしました。

まず、

何を変えたいのか。

雪、氷、滑りやすさ、水、温度、路面の変形などがあります。

次に、

どうやって変えるのか。

融かす。付着しにくくする。排水する。断熱する。変形を抑える。

ここでは、どんな作用を使うのかを考えます。

そして最後に、

どんな手段を使って実現するのか。

熱、薬剤、舗装構造、機械、ゴムや弾性材料などです。

こうして、

何を変えるのか。どうやって変えるのか。どんな手段を使うのか。

と分けてみると、少なくとも、

「ゴムが使えそうだから、ゴムで何かできないか。」

という順番ではなくなります。

まず、どんな状態を変えたいのか。

そのためには、どんな作用が必要なのか。

そこで初めて、

「では、ゴムや弾性材料が使えるだろうか。」

と考える。

こちらの方が自然なように思います。

どちらも必要。でも、まずは制御する側から

もちろん、状態を制御する技術と、状態を把握する技術のどちらか一方だけあればよい、という話ではありません。

状態を把握できなければ、どこに対策すればよいのか分かりません。

対策した後も、本当に効果があったのか確認できません。

ですから最終的には、

把握する。制御する。もう一度把握する。そして改善する。

という循環になるのだと思います。

ただ、自分たちが最初にどちらから入るのかと考えると、今のところ私は、

まずは状態を制御する側から考えてみたい。

と思っています。

理由は単純です。

自分たちが持っているのは、材料に関する技術だからです。

滑っている場所を正確に見つけることも大事です。

でも、

「どうすれば滑りにくくできるのか。」

「どうすれば雪や氷の状態を変えられるのか。」

「どうすれば凍上による変形を小さくできるのか。」

こちらの方が、自分たちの持っている技術とつながる可能性がありそうです。

もちろん、材料を使うことが目的ではありません。

状態をどう変えたいのか。

どんな作用が必要なのか。

そのために、ゴムや弾性材料が本当に役に立つのか。

順番としては、こちらだと思っています。

ところが、技術だけを調べても足りない

もう一つ、調べていて気づいたことがあります。

技術だけを調べていても駄目だ。

ということです。

札幌市の公表資料によると、2025年4月1日時点で、市が管理する道路の延長は約5,660kmあります。(資料1)

さらに、2025年度の道路除排雪経費は、2026年2月時点で約280億円。大雪対応の補正予算を加えると、350億円を超える規模になりました。(資料2)

2026年度予算では、道路の舗装等整備費だけでも約65億円が計上されています。
(資料3 127ページ)

これだけ大きな仕事が、毎年動いています。

これだけの仕事を、行政だけが担い、研究者も施工会社も材料会社も関わっていない、などということがあるはずがありません(笑)。

当然、すでに多くの行政機関、企業、大学、研究機関が関わっています。

道路を設計する人。

舗装する人。

除雪する人。

補修する人。

材料を作る人。

状態を計測する人。

技術を研究する人。

そして、その間には、長い時間をかけて作られてきた役割分担や仕事の流れがあるはずです。

慣れた業界なら、何とでもなるのだけれど

ここが、今の私には難しいところです。

慣れ親しんだ業界なら、

「この話なら、あの会社だな。」

「これは、あの人に聞けば分かる。」

くらいの見当がつきます。

多少知らないことが出てきても、何とかなります。

業界の中で、

誰が何を得意としているのか。

誰と誰がつながっているのか。

どこまでが昔からある技術で、どこからが新しいのか。

何となく地図を持っているからです。

でも、今回はそれがありません。

誰が何をやっているのかすら、よく分かっていない。

「既存のプレーヤーがたくさんいるだろう」というところまでは分かります。

でも、その人たちがどういう役割を担い、どういう仕組みで仕事が動いているのかは分からない。

考えてみれば、技術以上に、こちらを知らないことの方が問題なのかもしれません。

自分たちは、どこに入るのか

新しい技術を考えるとき、

「こんなものができたら面白い。」

という発想は大切です。

でも、すでに多くの人たちが仕事をしている世界に入っていくなら、

誰が、すでに何をやっているのか。

も知らなければいけません。

同じことを、すでに誰かがやっているかもしれない。

技術的には面白くても、現場では必要とされていないかもしれない。

逆に、既存技術ではまだ解決しにくい場所が残っているかもしれない。

そこに初めて、自分たちが入る意味が出てきます。

つまり今、私が作らなければならないのは、

技術の地図と、プレーヤーの地図。

この二つなのだと思い始めました。

技術の地図では、

何を把握するのか。

何を制御するのか。

さらに、何を変えたいのか、どう作用させるのか、どんな手段を使うのか。

プレーヤーの地図では、

誰が困っているのか。

誰が必要としているのか。

誰が研究しているのか。

誰が材料を作っているのか。

誰が設計するのか。

誰が施工するのか。

誰が維持管理するのか。

誰が評価するのか。

誰が導入を決めるのか。

誰が費用を負担するのか。

ある技術が面白いだけでは、現場では使えません。

その技術を必要とする人、評価する人、施工する人、維持する人、導入を決める人までつながって、初めて実際に使えるものになるはずです。

二つの地図を重ねてみれば、

「自分たちは、どこから入ればよいのか。」

が少し見えてくるかもしれません。

モノはなくても、準備はできる

前回は、

モノがなくても、まず話してみる。

と書きました。

その考えは変わっていません。

ただし、

モノがなくても相談は始められる。でも、何も整理しなくてよいわけではない。

ということなのだと思います。

限られた時間で話を少しでも深めるためには、自分なりに論点を整理しておく必要があります。

知らないことは、知らないと正直に言えばよい。

短期間で道路の専門家になれるはずもありません。

でも、せっかく専門家に時間を取ってもらうのであれば、少なくとも会話が成立するくらいには勉強しておきたい。

そして、

「私たちは、こんな材料技術を持っています。」

だけではなく、

「寒冷地の道路技術を調べてみると、私はこんな地図に見えてきました。」

「その中で、まず状態を制御する側から考えてみたいと思っています。」

「そして、すでに誰が何をやっているのかも知りたいと思っています。」

くらいの話はできるようにしておきたい。

さて、大学の先生と話すまでに、どこまで地図を描けるでしょうか。

少なくとも、

「そこからですか。」

と苦笑されない程度にはしておきたいと思っています(笑)。